2012年から7社をM&A
若手を中心に経営陣を育成

公開:2021年5月17日

M&A事例

みどりホールディングス 代表取締役 杉川 聡 氏

ビルメンテナンスの第一ビルサービスを中核に16社で構成する、みどりホールディングス。本業を柱に病院内給食や介護施設運営などへ多角化しており、M&Aを武器に事業を拡大している。2012年から7社をM&Aし、現在、社員数は1600人、グループ売上高は140億円に迫るまでに、成長させている。M&Aを円滑に進めるポイントについて、杉川聡社長に話を聞いた。

―M&Aを効果的に使って拡大しています。

当社が初めてM&A(企業の合併・買収)を実施したのは2012年。縁あって商業施設「マリーナホップ広島」の運営会社が傘下に入りしました。業績不振な事業会社から相談を受け、当社で対応できるならば頑張ってみようという感じで、当時はM&Aを会社発展のツールにする考えはありませんでした。当社がM&Aを実施したことで、その後、専門会社や金融機関から話が来るようになり、相乗効果の発揮といった会社の成長エンジンにするために、模索し始めました。

この8年間、母体の会社へのプラスにするため、相当研究しました。市場が縮小している業界や、経営不振の会社を立て直すのは、よっぽど条件が整わないと、難しい。一方で後継者不在の場合は、当社の管理システムを提供することで、スムーズに継承できることが多い。結果的に相乗効果を発揮して、7社全てで順調に拡大しています。

―M&A後は生え抜き社員を社長に登用するのですか。

生え抜き社員を配置しているのはグループの中でも3社。それ以外は当社から送り込んでいます。生え抜き社員は当社の人材よりは、その会社、社内スタッフをよく知っています。地域性も分かっている。例えば、ナンバー2人材は、対応力や人望があることが多い。後継者不足でも、番頭がいるような会社を選んでいます。ただ、ずっとサラリーマンだった方を社長にするので、経営者としての心構えとして、オーナー的な強い思いを持ってほしいとを伝えています。

―経営者人材の育成での工夫は。

当社は本業が不動産の管理収入という安定的な事業なので、ある程度アグレッシブに挑戦していこうという方針です。社員には「反省はしてもいいけど、後悔はするな」と伝えています。やらないで後悔する人は多いですからね。基本的には前向きで、積極的な人材が多いです。ただ、M&A先のナンバー2人材はどちらかというと、保守的な方が多い。

ただ、当社グループに入った限りは、自ら考えて自ら行動できる人になってほしい。当社では〝自立開発型人材〟と呼んでいます。グループの事業会社の社長の下には、大きいところでは何百人もいます。一国一城の主になって、良い意味で自覚ができてきています。

―マインドチェンジは難しくはないですか。

ポストが人を育てるところもあります。2012年に傘下に入った松江の会社は当時の専務が社長なって彼も努力をして、思った以上にスムーズにいきました。山口の会社も当時の専務に社長になってもらいました。前社長は専務が若いので難しいと話していましたが、やってみれば、十分なレベルでできています。モチベーションを持った人の自主性に任せることで相乗効果が発揮できると思います。環境を与えてあげれば、実はできる能力を持っている人はたくさんいます。

ただ、会社を維持するだけでは面白くありません。今後は次のステージに引き上げる必要性を感じています。現状の売上高を守ることに甘んじず、発展への強い意欲を持って業績を引き上げるよう気持ちの切り替えを指導しています。

―どのくらいの期間で、どういったプロセスで実行されていますか?

最近は当社からM&Aの事業会社に向けて営業をしています。そして、年間10社程度お話を今いただいています。そのうちトップ面談に至るのは半分。前に進める基準というのは相性。やっぱり社風がありますから。当社は安定的な上に少しアグレッシブな会社。全てがアグレッシブな会社もありますが、そこは親和性が低い。最終的な契約を結ぶのは、年間1~2社。お金がかかる話なので状況を見ながら、年2社程度がグループに入れば良いという状況です。

これまでで半年かからずに決済したケースがあります。M&A専門会社と付き合いが深くなり、担当者がよく当社のことを分かっているため、話が早かったですね。M&Aは市場自体がスタートしたばかりで、さまざまな問題があります。売り手の代理と、買い手の代理のプロ同士の調整が本来の姿と思いますが、現状は1社のM&A会社が売り主からの情報で、買い主を探しています。調整能力があるM&A会社であればいいですが、あまりない会社もあります。急激に市場が伸びており、専門会社も玉石混交。最終的な目的は被買収企業が一緒になって伸びること。買収金額が高すぎると、グループの中でその会社が重荷なってしまうこともあります。M&Aは情報収集戦。待っているだけでは情報は来ません。そこは見極めながら、積極的にやっていきたい。

―会社が増えることによる課題は何かありますか。

不動産管理業とシナジーを発揮できる領域はまだあります。お客さまの役に立ち、安心してもらえるような会社を目指し、対応力を高めたい。規模感、仕事量からすれば、1人の社長で売上高5億規模を3社までなら任せられると思います。ただ、業種・地域的に統合もあり得ます。例えば、山口県岩国市では第一ビルサービスの岩国支店がありましたが、A社とB社の支店も同じ場所に設けて効率が図れています。その次の段階は、その2つの会社の統合も検討しています。若手が成長して、売上高15~20億円規模の会社を統率できるようになれば、もう少し拡大ができると思っています。

私自身の大きな仕事は社長を作ることです。現在、30代半~40代半を対象にした「社長塾」を開いており、参加者の半分程度が事業会社の社長になっており、彼らはまだまだ成長の余地はあります。自分の責任の中で推進するという覚悟を持って、腹を据えてやっていく思考を持った社長をつくりたい。

―社会価値と経済価値を両立させることへの思いは。

当社のキーワードは「再生」。M&Aも再生の一つ。不動産も築40年以上の物件を買って再生しています。島根県江津市のリゾート施設「風の国」も再生をしています。

戦後、経済的に豊かな国になりましたが、90年初頭までがピークでその後30年は停滞状態。将来構想を描かずに過剰供給したことで、今、適正な規模に整理する必要性が出てきています。「風の国」はまさにそうで、過疎化が進んでいくところに、20数年前に右上がりの経済を意識した施設を作ってしまったわけです。ただ、そのまま廃墟にするのは、寂しいいですよね。可能な限り適正な規模に戻して、新しい役割を与えられればと思っています。

【プロフィル】
1963年に創業。ビルメンテナンスの第一ビルサービスを中核に16社で構成。本業を柱に病院内給食や介護施設運営など多角化。2012年から7社をM&Aし、事業を拡大。現在、社員数は1600人、グループ売上高は140億円に迫るまでに、成長させている。