マックスバリュ西日本社長 平尾健一氏 3社合併で地域密着型経営を推進

公開:2021年4月1日

M&A事例

サプライチェーン改革を推進 シナジー効果発揮し強み生かす

2019年3月に株式交換によって完全子会社化したマルナカ(高松市)、山陽マルナカ(岡山市)を吸収合併し、3月1日付で新生マックスバリュ西日本として始動。屋号をそのままとし、食品SMの「マックスバリュ」、「マルナカ」、ディスカウント業態「ザ・ビッグ」を合わせて中四国・兵庫に382店(うちマルナカ200、4月1日時点)体制を構築。経営資源やノウハウを相互に生かしながら地域密着型経営を深化する。統合によるシナジー効果や店づくりの方針を聞いた。

-生鮮品を強化しています。

鮮度とおいしさに徹底してこだわる。マルナカの生鮮商品力を生かし昨年から兵庫の浜坂港で水揚げ・ボイルしたホタルイカを翌日には全店で扱う。4月から高知のカツオのわら焼きが店頭に並ぶ。既に今朝採れのスイートコーンやキャベツ、シャインマスカットなどを直接産地から調達。かんきつの紅まどんななど、産地の店を越えて旬を楽しみにしてもらえるようになった。営業エリアの太平洋、日本海、瀬戸内海および山の恵みを年間通じて全店で扱う。

一方で、例えば味付けで言うと四国でも香川のすしは甘め、高知は酸味が強めなどの特色がある。好評の唐揚げは、統合記念商品として販売を始めた。地場メーカー仕入れ商品やエリア取引先とタッグを組んだ〝地元の味〟との両軸で品ぞろえを充実。地域生産者との関係を深め、各店舗が起点となって地場プラス他の産地を紹介し合う。豊かな食生活と地場産業、産地の活性化に一翼を担えればと願っている。

-サプライチェーン改革について。

生鮮品強化に伴い、川上から調達をどう変えていくか。さらに原料生産~加工~総菜化~販売を一貫して手掛け、3~5年計画でサプライチェーン改革を進める。現在は高松市のプロセスセンターから加工・調理した水産物や精肉、総菜、すしなどを四国エリアの店舗中心に配送。22年度中に2カ所目の新設を岡山県内で計画中だ。特にコロナ禍で地元回帰が進み、地場商品の消費が増えている。全社で個別稼働していたトラックを統一し、適正温度帯を保持しながら配送効率を高めていきたい。

-競合店にどう対応しますか。

3社が一つになってスタートしたばかり。まずは新会社として地域密着型経営を確立し、足元を強固にすることが先決。給与制度や人事、処遇など新基準も整備。営業体制を県単位に編成し、消費ニーズの変化に迅速に対応できるようにした。従業員満足と支持される店づくりを両立すべくサプライチェーンの改革を進め、3屋号の独自性を発揮しながら新しい価値の提供を目指す。

-移動販売が好調です。

現在山口、広島、兵庫で計4店舗を拠点に移動販売専用車10台が稼働し、高齢者施設や民家など約350カ所を巡る。西日本豪雨など災害時にはライフラインの役割も果たした。担当の従業員とは顔なじみになり、販売車の到着を楽しみにされているようだ。岡山北部や徳島西部でも計画中。商売の原点ともいえる信頼関係を築き、コミュニティの場ともなっている。

無人店舗を本社内で試験運営しているが、今後、専門学校内など閉鎖空間への導入も検討したい。また、ネットスーパー化やECサイト開設などデジタル化を進めていきたい。

実店舗の出店は21年度内に兵庫、徳島、愛媛、山陰などに計5店舗を予定。営業している「県単位」でドミナント出店していく。

-女性管理職の登用について。

正社員約5500人のうち女性は1700人で、パート・アルバイトは約3万2500人の大半が女性。3月にはダイバーシティ推進室を設置した。管理職の女性割合は現在12%、年度内に20%に引き上げる。

【プロフィル】 マックスバリュ西日本社長。1962年1月1日生まれ。84年ジャスコ(現イオン)入社。2016年マルナカ社長、MV西日本取締役、19年から現職。
広島経済レポート 2021年4月1日号掲載記事