年1社ペースでM&A実施
シナジー効果で成長軌道へ

公開:2021年5月17日

M&A事例

4月1日付で岡山市の大髙建設をグループ化した。M&A(合併・買収)による事業会社は5社目となる。建築工事業の木下組(佐伯区五日市町)などの持ち株会社として現在、施設設備を保守点検する木下エネルギーソリューションズ、山県郡の千代田工業・流通団地などでメガソーラーを管理運営する木下エネルギーパーク、水耕栽培や観光農園事業を手掛ける木下ファームのほか、M&Aによる5社を併せてグループ9社の売り上げは35億円規模に。今後も年1社ペースでM&Aを実施する方針を打ち出しており、その狙いを聞いた。

-M&Aを実施した会社の事業内容を教えてください。

2016年に実施した注文木造住宅建築の宝工務店(中区)は中小ビル建設も手掛け、前3月期決算で過去最高の売り上げを計上。

元々、社員のレベルは高く、能力を発揮できるようモチベーションを引き出すことが先決と考え、やりがいのある職場環境を整備したことから次第に業績につながった。翌年には管工事業のヤマテ工業(西区)、19年は河川や国道維持管理の藤村組(山口県岩国市)、続いて土木設計の広島構造技研をグループ化した。各社共に業歴40〜70年を重ね、地域に根付くが、後継者難を理由に事業の承継先を探していたケースがほとんど。歴史のある企業からは教わることも多く、貪欲に吸収している。M&Aの案件は年間で5件ほどあるが、そのうち成立するのは1社程度。トップの考え方や方向性が一致することが何より大事。

-一致する考え方とは。

第一に雇用を守る、社員ファーストの考え方。人材育成や雇用維持に対するトップの意識が一致していないと互いに不幸になる。企業の成長は社員一人一人の成長、幸せがあってこそ。会社は社員が幸せになるために存在している。社内で社員の笑い声を耳にするとうれしい。かつてはなかなかそうした素直な気持ちになれなかったことを思えば、M&Aを重ね、少しずつ私自身の心の成長につながったのかもしれない。むろん、大髙建設のトップともベクトルが一致している。同社は高架橋や橋梁の改修工事を手掛け、鉄道関連に強く、その技術力が魅力。さらに、岡山にも営業拠点の足掛かりができたことも大きい。M&Aにより相互の強みを共有しながら相乗効果の挙がる連携を図り、事業拡充やビジネスチャンスを生み出すことが狙い。オーナー会社が対象で、本来は子息、同族で継承するのが自然で最適だと考えており、将来、次期後継者が現れたら喜んで経営を受け渡したい。

-グループ間での人事異動はありますか。

今春の新卒者の入社は11人。大方は自分に何が向いているか、何ができるかが分からないという。入社後4、5年して配属先の希望と理由を聞いた上で適材適所の人員配置に努めている。事業会社が多ければ選択肢も増えるメリットがある。積極的に人的交流を図り、組織とグループ全体の活力を向上することが一番大切だと考えている。

業務拡張に連れて毎日、問題が起きるが、新しいことに挑戦している証しだと前向きに捉えている。グループ間で補完し合う社風も醸成されつつあり、今後も拡大発展で進めていく。縮小均衡では、その先に社員の成長と幸せが見えてこない。

-事業展開の方針は。

時代が求めている事業を探り、その方向性と継続性を重視してきた。水耕栽培事業の木下ファームは、高齢化で耕作放棄地が増える中山間地で、人手をかけず女性でも年間300〜500万円の安定入が見込める自立農業を促進できると考えた。現在、廃校を地域拠点によみがえらせる実証実験を計画中。木下エネルギーパークは13年に稼働した北広島町の第一発電所を皮切りに、来年5月から山口県防府市に14カ所目の太陽光発電所(出力2㍋㍗)を稼働させる予定。公共施設の屋根貸しも手掛ける。海底ケーブルではコストがかさむ瀬戸内海の島々への自家発電にも着手する。

木下組とヤマテ工業は昨年12月、水みらい広島と災害時応急活動の協定を結んだ。同社が管理受託する水道施設の緊急対応時に応援業務を担う。M&Aは地域社会に貢献するインフラ事業の柱を太くしていく有効な手段と位置付ける。IT関連も視野に入れ、全国を対象に今後も年1件ペースで進めていきたい。

広島経済レポート 2021年5月20日号掲載記事