マエダハウジング社長 前田政登己氏 30年にグループ10社300人へ〝住〟生活関連で事業広げる

公開:2021年3月11日

M&A事例

リフォーム・リノベーションの地場大手で、不動産会社や施工会社の設立ほか、18年の広島ハウジングサービスのM&Aなどで事業領域を広げてきた。新築や中古流通を含めて一貫した「地域密着住宅ワンストップサービス」を強みに成長する。新たなビジョンを聞いた。

-経営方針を教えてください。

長期的な視点として「地域で輝く100年企業になる」、「広島一『ありがとう』と『良かった』が集まる感動コミュニティー企業になる」の実現を掲げています。現在のグループ5社・社員130人から30年に10社・300人とする目標を定めました。一人でも多くの方とご縁をつなぎ、そして見える景色を変えたい。20年12月期グループ売上高は、出版業のザメディアジョンの傘下入りで前年比約10%増の34億円を計上。昨年はコロナで創業以来の厳しい一年となりました。今期は40億円を目指していきます。

-同ビジョンに込めた思いは。

創業から28年間、変わらない思いがあります。それは「会社を潰してはいけない」、「人の喜びが自分たちの喜び」、「価値観とビジョンの共有」の3点です。実は、私が27歳で創業したきっかけは、当時勤めていたリフォーム会社が倒産したことでした。取り残された状況で一番に頭に浮かんだのは、私を信用して仕事を依頼してくださったお客さまや取引先の顔です。会社を永続させ、何があってもやり遂げる大切さを痛感した出来事です。また、当社の設立4年目に協力業者会を結成し、理念の共有と質向上を徹底。お客さまに喜んでいただくためには、現場を含むあらゆる人が価値観を共有して質を追求する必要があると感じたからです。徐々に支持を得られ、経営も安定しました。その時、ふと思ったことがあります。なにかワクワクしないな、と。一人でも多くの人生に関われたらという気持ちが湧いてきたのです。その一心で社員を採用し、人材育成と経営理念の浸透を図ったことが現在の礎となったのだと思います。

-グループ10社に拡大する方法は。

社員の意見を吸い上げ、従来通り〝住〟から想起する生活関連の分野で広げます。県内6店舗まで増えましたが、県外展開は考えていません。評判が一番であり、品質重視で足元を一層固めます。新たに賃貸分野などを模索していますが、他社との競合ではなく、あくまで既存のお客さまをフォローする目的で、協業も考えています。昨年にグループ化したザメディアジョンとは、累計40冊以上の住宅関連本を制作してもらっていた縁があります。全国の同業者への提案や同社へのマネジメントノウハウの提供で相乗効果を図ります。私は本が大好きで、個人的には小さな本屋を構えることが新たな夢に。グループ全体として、ゆくゆくはホールディング化し、将来の経営承継を含めて永続する体制を敷きたい。

今後さらにCSV(共有価値の創造)が求められるでしょう。人生100年時代を迎え、退職後も長期的に住める環境の整備へ、マイホームの性能向上による健康増進や家庭内事故の抑制、住宅の長寿命化による社会資産価値の向上、社会問題化する空き家の流通促進などに貢献したい。これらの事業や地元企業との連携を通じて、「広島をリノベーションする」ために役立てたならうれしい。

【プロフィル】 マエダハウジング社長。1965年7月21日兵庫県姫路市に生まれ、岡山県津山市で育つ。国立津山工業高専を卒業し、86年マツダに入社。93年に創業し、95年4月に法人化した。2018年1月資本金1億円に増資。同年11月広島ハウジングサービスの全株式取得。19年府中町から中区八丁堀に本社移転。20年8月ザメディアジョンの株式を取得して子会社化。
広島経済レポート 2021年3月11日号掲載記事