ツーセルが早期上場に意欲 膝軟骨再生製品の量産へ

公開:2022年3月2日

広島のM&A

バイオ系ベンチャーのツーセル(南区比治山本町、日浦敏樹社長)は、膝軟骨の細胞治療製品「gMSC1」の量産へ生産体制の構築を本格化する。昨年10月、外傷性軟骨損傷のある患者の臨床試験(治験)の目標症例数だった70人目の手術を終了。ライセンス契約を結ぶ中外製薬(東京)が、最後の治験患者から約1年の経過をみて製造販売の承認を国に申請する。同製品の適用拡大や新たな再生医療製品の臨床研究を並行しており、早期の株式公開(上場)を実現し、研究開発を加速させる方針。

gMSC1はゲル状で粘着性と柔軟性があり、手術時に軟骨の損傷部分に付けて組織を再生させる。患者の細胞を使わず、患者以外の滑膜から採取した細胞を培養・移植するため、大量生産・安定供給できるのが特長だ。ツーセルが製造を担い、安定供給できる体制構築を進める。本社を置く広島産業文化センター内に生産設備を増強し、専門人材の確保、生産計画や受発注などの基幹システム導入などに取り組む。外傷性の軟骨損傷向けの実用化を経て、治療法が見つかっていない疾患に適用領域を拡大し、多くの患者への貢献を目指す。将来はさらなる増産に向けて工場建設も視野に入れる。

治験にめどが立った昨年10月以降、ひろしまイノベーション推進機構、ひろぎんホールディングス(HD)、日揮HDなどのファンドから相次ぎ出資を受け、手元資金を増やした。主幹事証券会社の審査を経て、gMSC1の発売を待たずに上場させる可能性もあるという。

同社は2003年設立の広島大学発ベンチャー。人体に存在する間葉系幹細胞(MSC)を用いた再生医療に取り組み、高品質な独自のMSC製品「gMSC」を研究開発。本来の機能では再生されにくい関節の軟骨に着目し、まず膝の軟骨損傷の治療を目標に開発に取り組んできた。現在は細胞を培養する培地の販売収入が大半で、21年3月期売上高は1600万円、最終損益は13億円の赤字。今期は開発の進捗に応じたマイルストーン収入で増収を見込む。

広島経済レポート 2022年2月24日号掲載記事