誰に相談すべき?事業承継に悩んだら

公開:2021年3月23日

コラム

M&A・事業承継の現場では「誰にも相談できなかった」という声をよく伺います。実際、事業承継に悩んだ際は、誰に相談するのが正解でしょうか?改めて、事業承継に悩んだ際に相談すべき候補とそれぞれの強み・弱みを整理しました。

記事のポイント

  • 事業承継の相談先は「顧問税理士・会計士」「メインバンク(地域金融機関)」、「M&A仲介会社」が多い。
  • 各相談先の強み・弱みを理解しよう。
  • 事業承継の行政相談窓口、「事業引継ぎ支援センター」も活用しよう。

事業承継に悩んだ際の相談相手

地域における事業承継の場合、相談相手となるのは、「顧問税理士・会計士」「メインバンク(地域金融機関)」、「M&A仲介会社」が多いです。それぞれの強み・弱みは以下のとおりです。

経営者に一番身近!顧問税理士・会計士

少し古いデータですが、2016年版中小企業白書において、「リスクテイク行動を取る上で相談・検討する相手」として挙げられたのが約6割が「税理士・会計士」でした。 【出典:2016年版中小企業白書

ここからも分かるように「税理士・会計士」は中小企業の経営者にとって身近な存在です。そんな税理士・会計士に相談する場合の強み・弱みを整理してみました。

強み・利点 弱み・課題
安心・信頼して相談できる 自社のことをよく理解してくれている 会計・税・財務の専門性が高い 買手企業のネットワーク・情報が少ない 相手先探しから行うM&A全般のノウハウ・経験が少ない

税理士・会計士は、会計・税務の顧問業務が主業務であることが多く、必ずしもM&Aの経験が豊富とは限りません。特に、買手企業の探索から行うM&A業務についてはほとんど経験・ノウハウがない税理士・会計士が多いと言って良いと思います。M&Aを決意し、買手企業をこれから探そうとする場合には、地域金融機関やM&A専門の仲介会社等、その分野に精通した知識・ノウハウ・ネットワークを有する専門家に依頼する方が適切と考えます。

一方、得意先を買手とするM&Aや、同業界の経営者仲間を買手とするM&Aのように、既に買手候補先が存在するM&Aも存在します。そういった場合、M&A手続きに必要な内容は、株価・条件や契約書等となります。その場合は、これらの業務の専門家である顧問税理士等に助言・サポートをしてもらうのは好ましいと思います。

また、地域の税理士事務所・会計事務所の中には、M&A仲介会社と提携しており、仲介会社を紹介してくれる場合もあります。信頼できる顧問税理士等に相談し、信頼できるM&A仲介会社を紹介してもらうのも良いと思います。

地域内のネットワークに強み!地域金融機関

信頼でき、自社の理解も深く、M&A全般の専門性も有している、M&Aの課題解決の心強い相談先が地域金融機関です。一方、課題としては、地域金融機関は地域内で取引関係の裾野が広く、多数の取引先と利害関係にあることから、中立的な判断・助言がしづらい局面もあるということです。これは個々の金融機関の社風や営業姿勢の問題ではなく、構造的な問題も存在すると認識しています。

強み・利点 弱み・課題
安心・信頼して相談できる 自社のことをよく理解してくれている M&A全般の専門性が高い 県内や地域内のネットワーク・情報は圧倒的に多い M&A仲介会社より報酬が低い場合がある 県外・地域外の買手ネットワークが少ない 売手と融資取引がある場合や、買手候補と融資取引がある場合、融資銀行としての立場もあるため、中立的な判断がしづらい場合がある

M&A・事業承継の現場では、経営者の方からよく「メインバンクに相談したら、自分の事業意欲が減退していると思われて融資を引き揚げられないか?」と聞かれます。確かに、融資取引だけであれば、そんな捉え方もあるかも知れません。しかし、時代は変わりました。マイナス金利の中、地域金融機関は「非金利収入の強化」にシフトしており、地域企業の事業承継・M&Aのサポートは最注力分野と言って良いと思います。相談して喜ばれることはあっても、相談することで融資を引き揚げられる可能性は低いと思います。

専門性の高さと幅広いネットワークが強み!大手M&A仲介会社

大手M&A仲介会社は、M&A専業であるがゆえに、M&Aの専門性・ネットワーク・情報は豊富であることが多いです。中立的な立場から助言を受けやすいと思います。一方で、顧問税理士等や地域金融機関と異なり、M&A専業であるがゆえに収益機会はM&Aのみであり、早期のM&A成約を第一優先とされる恐れがあります。また、実力・スタンス・報酬水準などにバラツキがあり、本当に信頼できる相手かどうかの見極めが必要と思います。

強み・利点 弱み・課題
M&A全般の専門性が高い 県内、県外いずれもネットワーク・情報がある 中立的な立場から助言が受けられる これまで付合いがなく“しがらみ”がないため、遠慮なく相談しやすい 実力、報酬水準、価値観などについて、信頼して良いかの見極めが必要 自社のことを一から説明する必要がある 報酬が高い仲介会社も存在する

それぞれの強み・弱みを比較!最適な相談相手とは?

これまで挙げた強み・弱みを比較表としてまとめました。M&A・事業承継を進める上では、こういった強み・弱みを理解し、適切な相談相手と協議をしていくことが重要です。

顧問税理士・会計士 地域金融機関 大手 M&A仲介
信頼度 見極めが必要
自社の理解 ×
税・会計の知識
M&A全般の経験・専門知識 ×~△
地域内買手ネットワーク ×
地域外買手ネットワーク ×
独立・中立性
報酬 基準なし 最低成功報酬1,000万円程度 最低成功報酬2,000万円程度

地域の事業承継相談窓口!事業引継ぎ支援センター

もう一つの相談窓口として、行政の相談窓口をご紹介します。経済産業省が地域の中小企業支援機関(商工会議所等)に業務を委託する形で、地域の事業承継の課題に対応すべく、窓口を設けています。行政という立場ですので、最も中立性の高い相談相手と言えます。


(中国地域)
鳥取県事業引継ぎ支援センター島根県事業引継ぎ支援センター岡山県事業引継ぎ支援センター広島県事業引継ぎ支援センター山口県事業引継ぎ支援センター
(四国地域)
徳島県事業引継ぎ支援センター香川県事業引継ぎ支援センター愛媛県事業引継ぎ支援センター高知県事業引継ぎ支援センター

最後に・・・

クレジオ・パートーズでは、全国の大手M&A仲介会社に負けない専門性とネットワークを有しながら、地域に基盤を置くことで、地域企業・地域経済への理解も深めています。税理士・公認会計士を多く抱えることで、会計・税務にも精通しており、日々その専門性を磨いています。仲介会社として、M&Aの案件成立のみをゴールとするのではなく、M&Aを通じて、経営者の意思決定に寄り添えるパートナーを目指しています。地域におけるM&A・事業承継について、悩んだ際は、お気軽にご相談ください。