食に特化した事業承継プラットフォームを展開 日本の伝統の味とブランドを守り、広げる
Vol.2 注目のピックアップカンパニー
まん福ホールディングス
〝食に特化した事業承継プラットフォーム〟事業を立ち上げ、日本の伝統の味とブランドを守るといったユニークなビジネスモデルを展開するまん福ホールディングス(東京)。代表の加藤氏は、2007年にあきんどスシローの経営に参画し、取締役COOとして回転寿司売上日本一・顧客満足度日本一に貢献。その後、全国展開のスーパースポーツゼビオの社長を経て、2021年4月に「まん福(ぷく)ホールディングス」を設立した。コロナ禍で苦境に立たされる食関連業界において、新たな事業モデルで立ち向かう。どのようなビジネスモデルを展開していくのか、構想を聞いた。
―まん福ホールディングスの事業概要について教えてください。まん福HDは、後継者不在に悩まれる食に携わる会社様の事業承継を行い、食業界において経験豊富な弊社社員が承継した会社様へ経営者として参画し、プロパー社員の皆様とともにブランドを守ったまま発展させるというビジネスを展開しています。
後継者不足に悩む中小事業者は多く、長年守られてきた味やブランドがなくなってしまうのは、その地域にとっても損失となります。弊社では、そうした後継者不在という社会課題を解決する一つの糸口となれたらと思います。そして、まん福グループとして、受け継がせていただいた会社の社員の皆様と一丸となり、世界に誇る日本の食文化を、未来につないでいきたいと考えています。
これまで事業承継したのは、食肉・水産加工、弁当製造販売、精肉店、唐揚げ専門店の5社で、売上高は連結で30億円規模に、社員数は連結で361人(2022年1月19日現在)規模に成長しています。関東・中部・九州で事業承継しており、今後は広島も含め全国を視野にいれ事業拡大を目指していきます。
私自身、大学院卒業後、ドイツ銀行グループとマッキンゼー&カンパニーで経営コンサルティングを学びました。その後、あきんどスシローなどの事業会社で経営に携わりました。
自分のこれまでの経験を生かし、社会課題の解決に貢献したいと思い、たどりついたのが、承継後に優秀な経営者を送り込む「マネジメント・バイ・イン(MBI)」というコンセプト。弊社の事業モデルで、中小企業の後継者不足という日本の社会課題の解決に貢献したい。
苦渋の決断で自社を外部に事業承継することを悩まれている創業者・創業家の方々から、真っ先に相談される存在になりたい。ミッションは、「『うまい』でこの国をしあわせ一杯に。」。日本中に最高の「うまい!」を残し、発展させて、広げていきたいですね。
私たちのビジネスモデルでは、承継した後は、基本的に売却はしません。まず自分たちがオーナーシップを持った後継者となる経験を積み、経営リーダーを数多く誕生させることで、ともに成長していきます。大切な事業を託していただくオーナー様と同じ思いを共有し、伝統の味やブランドを残していけるよう、しっかりと対話を繰り返し、未来へのビジョンを描いていきます。やる気と情熱とリスペクトを持って、成長を促していきたい。
これまでの案件で社長候補を募ったときに300人近くの応募がありました。自分自身の成長のために経営者に挑戦したいという人材が現れるというのは非常にうれしい。例えば、大企業に在籍する優秀なリーダーが、中小企業の経営者に挑戦するといった動きが活発化することで、地方創生への貢献につながると考えます。
これまでに受け継がせていただいた5社で、手ごたえを感じています。これからの時代、経営者人材をもっと多く増やさなければいけません。弊社は、経営者候補の人材にまずは一定期間、弊社グループ内で社長の補佐をしながら社長業を学んでもらい、経営者として育てていきます。
弊社で初めて承継させていただいた「ちがさき濱田屋」ですね。神奈川県に本社を構える創業60年の仕出し弁当屋で、後継者不足に悩んでおられました。弊社が承継後に、店舗戦略の再構築や、新商品の開発を進め、既存の6店舗の売り上げも伸び、3店舗の新規出店も実現しました。
-今後の事業展開について、どのようにお考えですか?今後、毎年5件程度の事業承継を計画し、5年後に20~30社のグループを目指しています。現在、食肉加工や水産加工などがグループ内にありますが、今後、会社の数が増えればグループ内のシナジー効果を発揮することができます。
広島でも事業承継を考えています。広島にはお好み焼きや、瀬戸内海の食材といった独自の食文化があります。広島ならではの食文化を日本中、世界中へと広げていきたいですね。
【会社名】まん福 ホールディングス
【代表者名】加藤 智治
【公式サイト】https://manpuku-hd.jp/
代表取締役社長 CEO 加藤 智治 / プロフィール
1974年熊本県生まれ。東京大学・東京大学大学院卒業。
大学卒業後、ドイツ銀行グループにてグローバル金融市場を体感し、マッキンゼー&カンパニーで経営コンサルティングを学ぶ。2007年あきんどスシローにターン・アラウンド・マネージャーとして参画、専務、取締役COOを歴任。15年からスーパースポーツゼビオ社長を務めた後、21年4月まん福ホールディングスを設立、社長に就任。