ムロオシステムズ 原発廃炉技術持つ独企業を買収

公開:2024年10月17日

広島のM&A

世界展開し3年後に売上100億円目指す

呉市発祥のムロオシステムズ(東京、潘忠信社長)は原子力発電所の廃炉関連事業や、超高温原子炉燃料のTRISO技術を活用した次世代クリーンエネルギーの開発に乗り出す。9月、ドイツに本社を置く原子力エンジニアリング大手企業NUKEM(ニューケム)テクノロジーズ エンジニアリング サービスの主要資産を取得し、買収手続きを完了した。金額は非公表。来年に日本法人を設立し、福島県の浜通り地区にR&D(研究開発)センターを構える予定。経年化した原子力施設の解体・撤去や廃棄物の処理・処分、跡地の有効利用に必要な作業などを数十年かけて行う「廃止措置」を世界中で展開していく。

ニューケムは1960年に設立し、廃止措置技術などで世界的に高い評価を受けている。ドイツで最初の商業用原発の廃炉を成功させ、現在も5基の廃炉プロジェクトを抱える。カールシュタイン・アム・マインという地域にある同国初の原発の跡地に本社を構えており、その廃炉と原状復旧も手掛けた。しかし2022年のウクライナ情勢など地政学的な問題によって欧州などで新規事業の進行が停止し、親会社のロシア国営原子力企業ROSATOM(ロスアトム)からの資金提供も止まったことで、24年4月にドイツ裁判所へ破産申請。ニューケムはロスアトムの経営支配を離れて破産管財人の管理下に置かれ、ムロオシステムズは破産管財人と交渉した。(ロシアの関与がないかなど)慎重な審査と協議を経て買収契約を結び、9月9日にドイツ政府の認可も取得した。ドイツの原子力関連団体の会長を務めるニューケムのトーマス・セイポルトCEOは続投し、110人の技術者ら全員を継続雇用。ムロオシステムズの潘社長がチェアマンを務める。

今後は欧州の事業基盤を強化し、アジアへの展開も積極化する。ウクライナ情勢の悪化前に100億円前後を売り上げており、向こう3年で同等規模への回復を目指す。ムロオシステムズは中央アジアのキルギスで水力発電に参入するなどエネルギー分野に力を入れており、IT技術を組み合わせながら事業を発展させていく考え。同社の24年3月期単独売上高は前年比15・9%増の21億130万円を計上。データセンター運営など非連結の海外事業は約24億円。

広島経済レポート2024年10月17日号掲載記事