着手金の必要性とは?

公開:2021年6月21日

経営コラム

はじめに

本コラムでは、M&A仲介会社各社及び専門家に依頼した段階で支払う費用である着手金について、現役M&Aアドバイザーができるだけ中立・公正な立場で、述べさせていただきます。どうしても一部記載で主観が入ってしまう部分もありますが、いち意見としてご参考にしていただければ幸いです。

なお、ここで指すM&Aとは中堅中小企業におけるM&Aを示しています。何卒ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

着手金とは

着手金とは、M&A業務を依頼時に、専門会社または専門家に支払う費用のことです。着手金の金額は、会社の規模や譲渡の難易度に応じて設定されていると言われています。この依頼時点つまり仲介契約締結時点では通常、M&Aの成功が確約されている訳ではありませんので、その支払いに躊躇される方もいらっしゃいます。

一方、最近では着手金が不要なM&A仲介会社も出てきましたので、必ず必要かと問われるとそうではないです(※)。
(※) 2020年3月31日公表 中小企業庁「中小M&Aガイドライン」について P.9
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001-1.pdf

着手金の必要性とは

なぜ、着手金が必要なのでしょうか。最近では、前述のとおり着手金が不要であるM&A仲介会社も出てきましたが、着手金のあるなしや金額の多寡等ではなく、着手金の必要性を確認していきましょう。

そもそも依頼時点から、専門会社及び専門家は何をしているのでしょうか。多くの専門会社及び専門家は、買い手候補先の打診前に、下記①現状分析及び②各種資料の作成をしています。そして、下記①②は着手金の受領理由として挙げられる役務提供範囲でもあります。

  1. 現状分析(必要な理由:M&Aのプロセスを進める上で、課題を整理するため)
    ・事業/財務/不動産その他の現状把握(各種資料の読み込み含む)
    ・企業価値評価(いわゆる正式な価値算定ではなく、特に売り手の意思決定の参考資料として使われる程度のレベル)
    ・売り手と、上記に係る不明点及び課題を売り手とすり合わせ
  2. 各種資料の作成(必要な理由:買い手に打診時、関係者がより良い理解を促すため)
    ・匿名資料(NN:ノンネームシート)の作成、すり合わせ
    ・詳細資料(IM:インフォメーションメモランダム)の作成、すり合わせ
    ・買い手候補先リスト(LL:ロングリスト)の作成、すり合わせ

では、着手金を払わない場合、上記①②は支援しないのか?と言われると、そうでないケースがほとんどだと思います。

しかし、M&A専門会社及び専門家と十分な信頼関係がなく、限定的な資料提示及び情報提供に留まってしまう場合、上記①②が不十分なままM&Aプロセスが進むケースもあります(なお、そうしたケースは、そもそもM&Aプロセスが進まない、または、進んだとしてもM&Aプロセス後に重要な問題が発覚して、最終的に交渉が中止または破断になるリスクを抱えやすいです。)。

これは筆者の主観であくまで比較論ですが、報酬を受領している以上は、ある程度のクオリティが担保されているように思いますが、無報酬の場合はケースバイケースでその品質にばらつきがあるように感じます。また、着手金を必要とするM&A仲介会社も作業報酬として着手金を頂くケースもあると思いますが、「着手金を払う≒M&Aをより真剣に考えている」と見ているケースもあると思います。

では、実際に着手金は必要なのか

どうしても筆者の主観になってしまい大変恐縮ですが、着手金が必要か不要かで申し上げると、どちらでもいいように感じます。大事なことは、①M&Aを真剣に考えている、②出会ったM&A専門会社及び専門家の中で、信頼できる会社または人に①を打ち明けることだと思います。

出会ったM&A専門会社及び専門家全てに①を打ち明けると、情報漏洩リスクも高まりますが、できれば1社だけでなく、2社~数社程度に絞って話を実際に聞いてみて、専門会社及び専門家を選定されたらよいと考えています。

選定した結果、その専門会社または専門家の方が着手金を必要とされるのであればお支払いすればよいですし、不要であればそのままM&Aプロセスを進められたらよいと思います。着手金のあるなしも大事かもしれませんが、どちらであっても、依頼者とM&Aアドバイザーが一枚岩となって、(急に信頼関係を築くことは難しいかもしれませんが)徐々に信頼関係を築きながら、自社の未来を共に導くという視点も併せて持っていただきたいです。

私以外の意見を見たい場合は、江野澤哲也著「中小企業のためのM&A戦略 損をしない会社売却の教科書」P86-89をご参考ください。

おわりに

当M&Aレポートとして、中立公正な立場でM&Aに係る着手金について記載させていただきました。他にも記載して欲しい内容があれば、お応えできるかは分かりませんが、地域M&Aにおける情報格差を低減するために、筆を走らせたいと考えています。

(文責:土井 一真 公認会計士・税理士)