TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)を解説!地域企業の成長の”起爆剤”としての「上場」

公開:2021年3月24日

経営コラム

2020年11月20日に岡山県内に本社を置く歯科電子カルテ統合システムの研究開発・販売・サポート等の事業を展開する「東和ハイシステム」がJASDAQ市場に上場承認されました(上場日は、2020年12月25日の予定)。企業の成長の一つのマイルストンとして「上場」が置かれますが、一口に「上場」と言っても、上場する市場によって、「東証第一部」「東証第二部」「東証マザーズ」「JASDAQ(ジャスダック)」「TOKYO PRO Market」といった選択肢があります。これらの市場のうち、比較的新しい「TOKYO PRO Market」について解説します。

記事のポイント

  • TOKYO PRO Market市場は、上場基準が柔軟で、上場までのスピードが早く、比較的コストが安い。「上場企業」ブランドを獲得できる。
  • 特定投資家しか買い付けできないため、資金調達効果は限定的な可能性。
  • 上場銘柄41社(2020年11月時点)であり、うち本社が東京の企業は10社。地域にも可能性あり。

TOKYO PRO Market市場とは

「TOKYO PRO Market」は、東京証券取引所が開設する日本で唯一の特定取引所金融商品市場であり、いわゆる「プロ投資家向け市場」と言われています。

開設の経緯は、2008年の改正金融商品取引法により導入された「プロ向け市場制度」に基づき、株式会社東京証券取引所グループとロンドン証券取引所の共同出資により創設された株式会社TOKYO AIM取引所による運営マーケットとして、2009年6月に開設されました。

目的として、「日本やアジアにおける成長力のある企業に新たな資金調達の場と他市場にはないメリットを提供すること」、「国内外のプロ投資家に新たな投資機会を提供すること」、「日本の金融市場の活性化ならびに国際化を図ること」が掲げられています。

直接買付けが可能な投資家は、プロ投資家に限られることや、ロンドン証券取引所を運営するロンドンAIMにおけるNomad制度を参考に「J-Adviser 制度」を採用していることに特徴があります。2012年7月からは「TOKYO PRO Market」として、東京証券取引所が市場運営を行っています。


(参考)株式会社日本取引所グループHP:https://www.jpx.co.jp/equities/products/tpm/outline/index.html

J-Adviser 制度

2008年の金融商品取引法改正によって可能となった制度です。一定の資格要件を満たし、資格を認証したJ-Adviserに対して特定業務(上場又は上場廃止に関する基準又は上場適格性要件に適合するかどうかの調査など)を委託します。通常他のマーケットの場合、こういった業務は「幹事証券会社」が行いますが、「TOKYO PRO Market」の場合は、事前に認証されたJ-Adviserが行うこととなります。

【J-Adviser一覧】(2020.11時点)

TOKYO PRO Marketの特徴

TOKYO PRO Marketのメリット

上場基準が柔軟

「TOKYO PRO Market」は、他市場に比べ上場基準が柔軟です。株主数や利益に関する数値基準がない他、監査証明が1年間であり、四半期開示や内部統制報告書の提出が任意になっています。

【TOKYO PRO Marketと他市場の比較】
TOKYO PRO Market 他市場
開示言語 日本語または英語 日本語
上場基準 数値基準なし 株主数、時価総額、流通株、利益等
上場申請から上場承認までの期間 10 営業日 2,3か月程度
監査証明 最近1年間 最近2年間
内部統制報告書 任意 必須
四半期開示 任意 必須
(出典)https://www.jpx.co.jp/equities/products/tpm/listing/tvdivq0000007z5r-att/tpm_01.pdf

スピードが早い

上記の比較表から分かるとおり、監査証明期間が「TOKYO PRO Market」の場合、「最近1年間」であるのに対し、他市場の場合は、「最近2年間」となっています。加えて、上場申請から上場承認までの期間も、「TOKYO PRO Market」の場合、10営業日であるのに対し、他市場の場合は、「2,3か月程度」となっています。

いずれも、「TOKYO PRO Market」の方が短くなっており、他市場と比較して早くなっています

コストが安い

一般的に「Tokyo PRO Market」は、他の市場と比べて費用が安いと言われています。参考として、「上場審査料」「新規上場料」「年間上場料」をそれぞれの市場で比較しました。

上場コストには、上記以外に「公開申請書類の作成費」、「監査法人や弁護士などへの報酬」等も含まれます。また、上場を維持するためのコストとして、他の市場は決算について、四半期開示であるのに対し、「TOKYO PRO Market」は決算は半期でよいため、その分の管理コストは安くなります。

「上場企業」というブランド

上記のとおり、比較的柔軟な基準で、早く「上場」というブランドを獲得できます。上場による効果は、企業の信用力の向上にあり、人材獲得力が増す等、様々な効果があります。いち早く「上場」というブランドを得ることで、企業の信用力・知名度向上の効果が期待できます。

TOKYO PRO Marketのデメリット

「TOKYO PRO Market」の特徴の一つは、直接買付けが可能な投資家は、プロ投資家に限られることです。一般投資家は直接買注文を入れることはできないこともあり、現在は、取引市場金額も他と比較して小さく、一般的な知名度もまだ高くはないため、上場による資金調達の効果は限定的である可能性があります。

(出典)https://www.jpx.co.jp/equities/products/tpm/outline/01.html

TOKYO PRO Marketの銘柄一覧(2020.11月時点)

2020年11月時点で上場銘柄は41社あります。うち10社は本社を東京都に置いていますが、それ以外は東京都以外に本社を置く企業であり、地域企業の割合が高いと言えます。

上場日 銘柄名 本社所在地 担当 J-Adviser名 業種
2020/12/11 Geolocation Technology 静岡県 三島市 エイチ・エス証券 IP Geolocationを活用したマーケティング
2020/11/16 北海道歯科産業 北海道 札幌市 日本M&Aセンター 歯科向けコンサル・機器販売・メンテナンス
2020/10/28 一寸房 北海道 札幌市 日本M&Aセンター 建築・構造設計・測量等
2020/10/21 アートフォースジャパン 静岡県 伊東市 フィリップ証券 地盤調査・地盤改良、移動式クレーン・リース保証業務
2020/10/2 バルコス 鳥取県 倉吉市 フィリップ証券 バッグ製造・販売
2020/5/27 ファーストステージ 大阪府 大阪市 フィリップ証券 マンション分譲、賃貸管理、太陽光発電
2020/5/25 C Channel 東京都 港区 フィリップ証券 メディア、eコマース等
2020/5/20 カレント自動車 神奈川県 横浜市 フィリップ証券 輸入車販売・買取、修理・整備等
2020/4/28 エージェント 東京都 渋谷区 日本M&Aセンター 総合人材サービス
2020/2/27 横浜ライト工業 神奈川県 横浜市 宝印刷 既存杭引抜工事、解体・土木工事、メガソーラー等
2019/11/25 QLSホールディングス 大阪府 大阪市 フィリップ証券 介護・保育
2019/9/26 清鋼材 新潟県 糸魚川市 フィリップ証券 鋼材加工・販売
2019/9/26 軽自動車館 北海道 札幌市 宝印刷 自動車販売・買取・整備等
2019/9/20 Kips 東京都 千代田区 宝印刷 メディア、投資等
2019/7/31 Liv-up 東京都 港区 宝印刷 不動産事業
2019/6/26 STG 大阪府 八尾市 宝印刷 マグネシウム・アルミダイカスト製品製造
2019/3/5 マルク 愛媛県 松山市 フィリップ証券 障がい者就労支援等
2019/2/21 タカネットサービス 神奈川県 横浜市 フィリップ証券 中古トラック買取・販売、自動車リース等
2018/12/19 パスロジ 東京都 千代田区 フィリップ証券 セキュリティソフトウェア開発販売
2018/11/28 筑波精工 栃木県 河内郡 アイ・アール ジャパン 静電吸着システムの開発・製造・販売
2018/9/19 アザース 愛媛県 松山市 日本M&Aセンター ラーメン、フランチャイズ
2018/7/27 フロンティア 福岡県 福岡市 宝印刷 自動車用品製造・販売
2018/5/16 ひかりホールディングス 岐阜県 多治見市 フィリップ証券 内装・建築・輸入・電気通信工事のグループ会社
2018/5/2 ビズライト・テクノロジー 東京都 千代田区 フィリップ証券 ソフトウェア開発
2018/4/24 揚工舎 東京都 板橋区 フィリップ証券 介護・福祉
2017/10/30 パパネッツ 埼玉県 越谷市 フィリップ証券 住宅管理会社サポート、内装工事、システム
2017/10/24 翔栄 愛知県 名古屋市 フィリップ証券 不動産投資開発・仲介・賃貸
2017/10/17 クボデラ 東京都 中野区 宝印刷 木材輸入卸、神棚販売等
2017/9/19 富士テクノソリューションズ 神奈川県 厚木市 フィリップ証券 製造業向けコンサル、ソフトウェア開発、人材派遣等
2017/6/30 トリプルワン 東京都 中央区 フィリップ証券 メカトロニクス装置設計塩梅、電子部品販売、エンジニア派遣等
2017/3/3 やまぜんホームズ 三重県 桑名市 フィリップ証券 戸建住宅事業、飲食、介護
2016/6/23 コンピュータマインド 神奈川県 川崎市 フィリップ証券 新聞系システム開発等
2015/9/11 デンタス 徳島県 徳島市 宝印刷 歯科医療材料の研究開発、機器製造・販売等
2015/8/18 動力 愛知県 安城市 フィリップ証券 建設・工事、太陽光発電システム取付工事等等
2015/3/23 TSON 愛知県 名古屋市 フィリップ証券 不動産売買・仲介等
2015/1/27 シンプレクス・ファイナンシャル・ホールディングス 東京都 千代田区 日本M&Aセンター ファイナンス
2014/10/20 イー・カムトゥルー 北海道 札幌市 フィリップ証券 システム開発等
2014/7/14 中央インターナショナルグループ 佐賀県 佐賀市 宝印刷 保険代理業
2013/6/4 沖縄県 那覇市 宝印刷 レストラン経営による飲食事業
2012/9/25 新東京グループ 千葉県 松戸市 フィリップ証券 環境ソリューション
2012/5/28 五洋食品産業 福岡県 糸島市 みずほ証券 冷凍洋菓子の製造

中国・四国地域におけるTOKYO PRO Market上場銘柄

上記のうち、中国・四国地域に本社を置く企業は以下のとおりです。

バルコス(鳥取県)

鳥取県倉吉市に本社を置き、デザイン、素材や縫製、機能性にこだわったバッグの製造販売事業を展開しています。近年は海外展開も積極的に行い、日本の一流ブランドとして世界というステージに挑戦しています。
【HP】https://www.barcos.jp/

マルク(愛媛県)

愛媛県松山市に本社を置き、障がい者就労継続支援や放課後等デイサービス事業を展開しています。
【HP】http://maruc-group.jp/

アザース(愛媛県)

愛媛県松山市に本社を置き、「食文化を提案する」を経営理念に掲げ、ラーメンのフランチャイズ事業を展開しています。国内では愛媛県・鳥取県にそれぞれ4店舗、広島県・山口県・香川県にそれぞれ1店舗、合計11店舗展開しており、海外では香港に3店舗、中国・タイ・スロバキアにそれぞれ1店舗、合計6店舗展開しています。
【HP】https://www.az-earth.com/

デンタス(徳島県)

徳島県徳島市に本社を置き、歯科技工の分野において材料の研究開発・機械器具の製造販売等の事業を展開しています。
【HP】https://www.dentas.jp/index.html

終わりに

今回はTOKYO PRO Marketに注目し、その特徴や中国・四国地域における現状をまとめました。TOKYO PRO Market市場は、上場基準が比較的柔軟かつ上場までのスピードが早く、コストが安いことから、他の市場と比較して「上場」というブランドを獲得しやすい傾向にある一方、「特定投資家」しか買い付けできないため、資金調達効果は限定的な可能性があります。

上場銘柄41社(2020年11月時点)のうち、東京本社企業は10社であり、地域においても様々な会社が同市場において上場を果たしています。今後の成長を目指す企業にとっても、市場の特性を考慮した上で、上手な活用が期待されます。