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M&Aで事業譲渡を進めていくためには、譲渡条件が合致する買手候補先と巡り合うことが必要です。より条件の合致する買手候補先に巡り合うためには、自社のビジネスを買手候補先から魅力的に思ってもらう必要があります。M&Aのケースによって想定されるシナジー効果は様々ですが、自社のビジネスを磨き上げることで、そのシナジー効果も高まります。これまでの経験から、「条件の合う買手候補先が現れやすい会社のポイント」を挙げていきます。
記事のポイント
- 「条件の合う買手候補先が現れやすい会社のポイント」を「事業内容」「取引先」「社内体制・人材育成」に分類
- 特に重要なのは「社長が人材育成に熱心」であること
条件の合う買手候補先が現れやすい会社のポイント
事業内容に関するポイント
- 事業規模が相応(目安として年商1億円以上、正社員数5人以上)
- 収益力が高い
- 内部留保が多い
- 銀行借入が少ない
- ストック型の業種(不動産管理業、ビルメンテナンス業など)
- スケールメリットの利く業種、再編盛んな業種(調剤薬局、保険代理店、卸など)
- 商圏の人口が多い
- 立地が良い
- 高い技術力を有している
- 独自のビジネスモデルを有している
- 許認可業種である
- 官公庁の入札実績がある
- 知名度が高い
- ブランド力が高い
取引先に関するポイント
- 優良な取引先を有している
- 取引先が程よく分散している
社内体制・人材育成に関するポイント
- 社長が人材育成に熱心である
- 社長以外の取締役(管理、現場)がいる
- 取締役がいなくても、部長クラス(管理、現場)の責任者がいる
- 20代~40代の次世代又は若手社員が多い(60代、50代ばかりではない)
- 技術者・資格者が多い
- 営業は社長一人に依存していない
- 月次決算を行っている
- 社長・幹部・現場が数字に強い、採算意識・コスト意識が強い
- 職場がきれい、社員が挨拶をするなど、職場・社員に活気がある
中小企業のM&A・事業承継の成否は「人材育成」
比較的事業規模の小さい中小企業は、事業規模が相応に大きな企業よりも買手候補先が少ないのが実情です。しかし、規模の小さい企業であっても、複数の買手候補先が手を挙げることもあります。その成否を分ける最も普遍的な要素は「社長が人材育成に熱心」であることと思います。会社の一番の財産は「人材」です。経営者が人材育成に熱心な会社は、規模が小さくても、社員の営業力が高い、技術力が高い、資格者がいる、仕事の効率が高い、良い顧客が多いなど、買手候補先にとって魅力に映る要素があると思います。また、そのような会社は結果として一定の収益力も確保していることが多いと思います。人材育成に注力することは、将来のM&Aを進める場合にも有効な手段の一つです。将来を見据えて、今、何を行動に移すべきかが問われています。