キマルーム創業者 不動産業特化のM&A仲介
独自の企業価値評価で活性化狙う
広島発祥のキマルーム(東京)創業者で、2023年に同社を大東建託グループにM&Aで売却した西野量氏が5月、全国で珍しい不動産業界に特化したM&A仲介を手掛ける企業「タグボート」を創業した。業界に携わった知見を生かす独自の企業価値評価に加え、自身のM&A経験を基に差別化を図る。
国土交通省によると、宅地建物取引業者は24年3月末時点で13万583業者と、コンビニエンスストア店舗数(24年1月時点、5万5657店)よりも多い。人口減少社会の中、特にストックビジネスである不動産管理業は成長が頭打ちを迎えており、大手各社はM&Aを重要な成長戦略に位置付けている。一方、承継に悩む多くの小規模零細業者は、資産や負債を基に企業全体の価値を評価する一般的なコストアプローチ手法だと過小評価される傾向があるという。こうした背景から、同業界のM&Aで実績が豊富な仲介事業者が少 なく、市場が活性化しない現状がある。
同社は同業界の企業価値を、管理戸数を中心にしたインカムアプローチで算出。将来にわたって生み出すキャッシュフローや収益を基に算出することで、売り手にとっては売却額の底上げにつなげ、買い手にとっては買収後のメリットを可視化し、企業売買を加速させる。当面は広島や岡山を主対象に、将来は営業エリアを全国に広げる計画。
広島経済活性化推進倶楽部(KKC)が6月6日、サテライトキャンパスひろしまで開く第56回起業家・投資家・専門家「プレゼン」交流会で講演する。西野社長は「不動産業者が廃業を考える際、必要以上に低姿勢となり、知り合いに管理物件の受け入れを懇願する場面をいくつも見てきた。これまでの経験から売り手、買い手ともにつながりが深いと自負している。業界の適正な再編を促し、活性化に寄与したい」と話す。