広島ベンチャーキャピタル ナノセラミック分離膜のイーセップに出資
広大シーズのシリカ系分離膜実用化、上場目指す
広島ベンチャーキャピタル(広島VC、中区銀山町3-1)はナノセラミック分離膜開発・製造のイーセップ(京都府相楽郡精華町、澤村健一社長)に出資した。広島大学のシーズを基に高透過性のシリカ系分離膜の事業化に成功。同分離膜量産設備の増強を行い、2025年の大阪・関西万博に合わせて同分離膜を活用したカーボンニュートラルプロセスの実証を予定。早期に東証グロースへの上場を目指している。
イーセップは広島大学の浅枝正司名誉教授や都留稔了名誉教授が行ってきたシリカ系分離膜の研究シーズなどを基に、澤村社長が13年10 月に創業・設立。ナノセラミック分離膜は、従来「耐久性は高いが分離性能は低い」とされてきたが、同社は細孔径の超精密制御を可能にすることで分離性能の向上と量産化に成功。加えてシリカ系分離膜は有機化合液分離、水素分離などで利用可能で、ナノセラミック分離膜で先行するゼオライト系分離膜より、大きさやpH(水素イオン濃度、酸性・アルカリ性)の適用範囲が広い。現在は主に大手企業と連携し、分離膜を組み込んだ化学プロセス開発受託に取り組んでいるが、将来的には分離膜モジュールの製造販売で世界市場への展開とトップシェア獲得を目指す。
22年4月に広島大学東広島キャンパスの東地区エネルギーセンター内に、広島大学連携室を新設。福山誠司室長(特任教授)、研究者2人が常駐し、共同研究講座運営のほか、広島大分離工学研究室(都留教授が3月に退任し現在は金指正言教授、長澤寛規准教授)と共同研究を行い、大学の知見・ノウハウ習得を図っている。同大大学院卒業生が同社に多く採用されていることもあり、出資を決めた。11月にはひろぎんホールディングスなどが開催するビジネスマッチング「TSUNAGU(ツナグ)」に出展予定。25年の大阪・関西万博では本社敷地内に海外企業も案内し、シリカ系分離膜の活用実演を計画する。
イーセップの3月1日現在の資本金(資本剰余金含む)は4億4300万円。6月までに広島VCと三井金属SBIマテリアルイノベーションファンド、日東精工を引受先に第三者割当増資を行い、総額6億1300万円になった。