食品メーカー コスト上昇に効率改善で対応
省エネ機器やIoT導入、業界内M&A相次ぐ

公開:2024年8月8日

広島のM&A

県内の食品製造事業者が効率改善に注力している。原料費をはじめ、加工・輸送などに必要なエネルギー費、人件費などの高騰が続く中、最新機器の導入やIT活用を進めてコスト吸収を図るほか、業界内でのリソースを有効活用するためのM&A事例も相次ぐ。

豆腐のやまみ(三原市)は工場に太陽光発電や高効率ガスなどの省エネ機器に加え、IoT技術を導入した。設備や社員の状況をスムーズに把握できるだけでなく、従来は人間の感覚に頼っていた品質管理も、データ化により安定させられるという。オタフクソース(西区)はAIを活用して製品の需要を予測。生産から加工、流通、販売といった全体の流れを最適化し、無駄の少ない体制を築いている。セブン-イレブン向けに弁当や総菜を作るデリカウイング(廿日市市)は原材料に地元の食材を多く使う方針を掲げ、輸送コスト低減や物流の人手不足対策につなげたいとする。

M&Aなどの事例では、備後漬物(福山市)が23年6月に鶏卵加工食品の福山コープ(同)、24年3月には冷凍たこ焼きを製造する岡本食品(同)の全株式を取得した。寺岡有機醸造などグループで食品事業を手掛けるロイヤルコーポレーション(安芸区)も、24年に菓子製販の共楽堂(三原市)とレンコン加工の広中食品(山口県岩国市)の2社と資本業務提携。業務用即席スープの丸二(中区)は23年10月、エバラ食品工業(横浜市)の子会社となった。また業務用卵焼きなどのあじかん(西区)は円安による輸入費増を受け23年12月、中国の販売子会社を解散して製造子会社に統合。製販を一体化して現地での販売を強化する。

帝国データバンクが国内の主要195社を対象に行った調べによると、今年8月の飲食料品値上げは642品目。年間を通じて記録的な値上げラッシュだった昨年同月に比べ約46%減ったものの、加工食品やチョコレート製品などの価格が上昇する。また半期の節目となる10月には4月以来の2000品目超えが予想されるほか、資材価格の高騰が続く酒類が値上げされれば前年同月並みの4000品目前後となる可能性もある。幅広い産業でコストの価格転嫁が進む中、消費マインドの維持・向上には同時に企業の賃上げも欠かせない。難しい判断を迫られる。

広島経済レポート2024年8月8日号掲載記事