事業承継における資金調達

公開:2021年3月10日

コラム

事業承継において、親族・従業員など会社を承継してくれる人がいる場合でも、それで事業承継が解決するわけではありません。事業を承継するには様々な資金が必要となります。後継者が自己資金で賄える場合は理想的ですが、自己資金で賄えない場合には資金調達の必要があり、資金調達をスムーズにできるかどうかが、円滑な事業承継の成否を分ける大きなポイントとなります。事業承継を円滑に進めるためにどのような資金が必要なのか把握して、資金調達の必要性について認識しておきましょう。

本記事のポイント

  • 事業承継のためには株式・事業用資産等を買い取る等、様々な資金が必要
  • 事業承継の資金調達に利用できる様々な制度が存在
  • 円滑な事業承継のためには資金調達が必要であり、早めに専門家へ相談

事業承継には様々な資金が必要

事業承継の際には以下の資金が必要になります。

〈後継者が親族の場合〉
  • 後継者が現経営者から自社株・事業用資産などを買取るための資金
  • 後継者が相続・贈与で自社株等を取得した場合の納税資金
  • 後継者が相続により取得した場合、他の相続人などから自社株式や事業用資産を買取るための資金
〈後継者が親族以外の場合〉
  • 社内の役員・従業員が現経営者から株式・事業用資産の買い取るための資金 =MBO(役員による株式取得)・EBO(従業員による株式取得)資金
  • 第三者が株式を買い取るための資金 =M&A資金
〈その他の費用〉
  • 事業承継を行う前に会社を整備する資金
  • 古くなった設備を更新する資金
  • 後継者が経営の改善を図る場合の資金
  • 経営革新を行うために係る資金
  • 経営者交代による融資条件の悪化に伴う運転資金や設備資金
  • 経営者交代による取引先の取引条件悪化に伴う資金

事業承継に利用できる資金調達制度

事業承継の時に必要な資金を対象とした様々な制度があります。 以下に主な制度をご紹介します。 (日本政策金融公庫)
  • 事業承継・集約・活性化支援資金

    日本政策金融公庫が設けている低利融資制度です。経営承継円滑化法に基づく認定を受けた会社や、後継者である個人事業主あるいは代表者個人が資金を必要とする場合に利用できます。
(信用保証協会)
  • 事業承継特別保証制度

    経営承継円滑化法に基づく認定を受けた会社及び個人事業主が、事業承継に関する資金を金融機関から借り入れる場合に、信用保証協会の保証枠とは別枠で利用することができます。
(中小企業基盤整備機構) (補助金)
  • 事業承継補助金

    後継者不在等により、事業継続が困難になることが見込まれている中小企業者等を支援する補助金です。主に経営者の交代を契機とした経営革新等を行う中小企業者等に対して、その取組に要する経費の一部を補助する類型(後継者承継支援型)と、事業再編・事業統合を契機とした経営革新等を行う中小企業者等に対して、その取組に要する経費の一部を補助する類型(事業再編・事業統合支援型)の二つの類型を対象としています。

おわりに

中小企業や小規模事業者の事業継続や維持のためには、円滑な事業承継が重要です。しかし、事業承継は経営者にとって一大事である一方、後継者にとっては大きな金銭的負担を伴うものとなる場合があります。その場合、いかに金銭的負担を軽減するかということが大きな問題となります。この問題を解決するためには、前もって必要となる資金を認識した上で、様々な事業承継対策を行ない、早めの計画・準備を行うことが重要です。そのうえで前述のような各種制度を利用し、無理のない資金調達を実現することが必要です。円滑な事業承継を行うために、経営者だけで悩まずに事業承継に精通する専門家に相談することをおススメします。