広島県M&A事例と経済概況

公開:2021年6月3日

コラム

はじめに

地域には様々な産業があり、M&Aを検討する上でも、それぞれの産業特性を考えた上で、売手・買手、双方の状況やニーズ・課題を把握することが必要です。広島県の経済や産業の概況や、休廃業・解散、倒産件数に加え、後継者不在率を全国と比較し、広島経済を俯瞰しつつ、広島地域で実施されたM&A案件をピックアップしました。

広島県経済の概況

広島県は、平成29年度名目県内総生産 11 兆 7908 億円(2017年度)であり、その成長率は +0.4%となっており、生産面では特に建設業、卸売・小売業等の寄与が大きくなっています。

人口は、約280万人(令和2年6月1日時点)であり、産業の特徴は「ものづくり」が軸となり、自動車・造船・鉄鋼等の製造業が主軸となっており、製造品出荷額等は,中国・四国地域の中でも1位の地域です。関西と九州の中間に位置し、人や物流の拠点であり、近年は観光産業も盛んに取り組まれており、中国地域のビジネスの拠点として機能しています。(出典:広島県HP等より)

広島県の休廃業・解散、倒産の状況

2019年の広島県の休廃業・解散件数は655件であり、2年ぶりに増加しました。また倒産件数は、190件であり、前年比+3.3%の増加となりました。業種別では、「その他」「製造業」「卸売業」の増加率が高く、件数では「建設業」が最も多い結果となりました。

全国における2019年の休廃業・解散件数は 23,634件であり、広島県が占める割合は、2.8%となっています。倒産件数については、全国では 8,354件であり、広島県が占める割合は、2.3%となっています。

(出典:帝国データバンク調査より)

広島県の後継者不在率

2019年の広島県の後継者不在率は73.1%であり、全国の中で4番目に高い地域になっています。業種別では、「建設業」がトップで79.2%となっています。全国における後継者不在率は、65.2%であり、同じく「建設業」がトップで70.6%となっています。

(出典:帝国デーバンクより当社加工)

広島地域で起こったM&A事例

直近で広島県の地域経済においてインパクトが大きいM&A案件をピックアップしました。

事例① フジがニチエーを完全子会社化(2020.1発表)

四国地域の地場流通大手のフジ(愛媛県松山市)が、広島県で食品スーパーを11店舗展開していたニチエー(広島県福山市)を完全子会社することを2020年1月に発表しました。地域におけるスーパーマーケット業界の再編の一つに位置付けられるM&A事例です。

事例② ブルドックソースがサンフーズを子会社化(2019.10発表)

ブルドックソース(東京都)が、広島でお好み焼きの「ミツワソース」や「ヒガシマル」でブランド展開していたサンフーズ(広島県広島市)を完全子会社化しました。サンフーズは、1916年の老舗ブランドであり、ブルドックソースにとっては14年ぶりのM&Aとなりました。ブルドックソース自身も1902年創業であり、地域と歴史を超えたソース業界におけるM&A事例です。

事例③ キングファクトリーグループへひろしまイノベーション推進機構が出資(2020.4発表)

広島・東京・大阪で、広島県のご当地グルメである「汁なし担々麺」の“キング軒”や、「お好み焼き」の店舗を計7店舗展開しているキングファクトリーグループ(広島県広島市)へ、広島県100%出資で設立された投資ファンドであるひろしまイノベーション推進機構が出資し、事業承継と成長支援を目的に同社の全株式を引き受けました。地域から全国へ羽ばたくビジネスを行政等が出資しているファンドが支援した好事例です。

おわりに

広島県は、ものづくり産業を軸に中国地域のビジネス拠点として、経済活動が行われています。休廃業・解散、倒産件数は、全国の約2~3%となっていますが、後継者不在率については、全国においても順位が高く、事業承継が大きな課題となっている地域です。

M&A案件では、地域に身近な飲食・小売関係をはじめ、業界の再編の一つとして、M&Aが行われています。これまでの後継者不在の課題に加え、新型コロナウィルスの影響により、業界再編の動きの加速化が見込まれ、事業承継型や業界再編型M&Aニーズは益々増加することが予測されます。