会社の「配当」について知ってますか?

公開:2021年3月24日

コラム

記事のポイント

会社は株主に対して「配当」を支払うケースがあります。「配当を支払わなければならない」と認識している経営者の方もいらっしゃると思いますが、配当を支払わなくてよいケースも存在します。今回は、オーナー経営者と株主の関係の中でも「配当」に関する議論について、その論点を整理します。

  1. 「配当」は、オーナー一人株主やオーナー家族のみが株主の会社の場合、税効率が非常に悪い。
  2. 「配当」は、事業承継においても株価を押し上げる要因になる。
  3. 「配当」は、株主総会で支払うかどうかを決定。戦略的な方針が必要。

「配当」の税効率と「株価」との関係

税制面における配当の取扱い

配当は会社から株主に対して支払われるものです。配当を支払う会社において、配当は損金(経費)とならず、法人税等が課税された後の利益が配当の財源となります。配当を受け取る株主側はどうでしょうか。株主が法人であれば、一定の金額が益金不算入(課税対象外)となります。1/3超の株式を保有しているなど一定の場合には配当の全額が益金不算入(課税対象外)となります。一方で株主が個人であれば一定の金額について配当控除(課税対象外)が認められますが、給与等と合算され比較的重たい税率が課されます。

配当に対する税効率

オーナー企業で、株主がオーナー一人しかいないような会社において配当を支払うことは、税効率が非常に悪いです。受け取る個人側では給与等と合算され総合課税となり、給与や配当の金額が多額であれば、最大で約50%の税率で課税されます。問題なのは支払う法人側です。支払う方は損金とならない点で効率が非常に悪いです。

仮にオーナーが同じ金額を受け取るのであれば、全額を給与で受け取った方が税効率は良いです。受け取る個人側では配当控除がないので若干税率は重たくなりますが、支払う法人側では損金となります。ただし、税務署において「不相当に高額な給与」と認定されると高額な部分については損金不算入となります。

配当が「株価」に与える影響

配当を支払うことは事業承継対策においても「株価」を高く押し上げる要因となります。自社株式の評価(相続税評価:原則的評価)は「純資産価額方式」と「類似業種比準価額方式」を用いて算出することになりますが、配当を支払うことにより「類似業種比準価額方式」による株価が高くなる結果となります。

「 類似業種比準価額方式」は自社の「配当」「利益」「簿価純資産」を、国税庁が公表する類似業種の指標と掛け合わせ計算をします。つまり、配当を支払わなければ配当部分は0と計算されその分だけ類似業種比準価額は低くなるのに対し、配当を支払う場合は一定の金額が計上されることとなりその分だけ類似業種比準価額を押し上げることとなるのです。

「配当」は支払う必要がある?

「配当」を支払うかどうかは株主総会の決議で決まる

会社が配当を支払うか否かは、株主総会の決議によって決まります。株主の過半数が配当に賛同すれば支払うこととなりますし、過半数が配当に反対をすれば支払わないで良いという結論になります。

会社オーナーの中には「配当は法律上支払わなければならない」と思い込んでいる方もいますが、それは実は間違いです。社長自身が大株主である場合、自分自身で配当をするか否かを決めることが可能です。その場合、大株主である自分自身に配当を支払うということは、税効率の観点からもその必要性を考慮すべきだと思います。

他株主に配当を支払う場合

オーナー以外にも株主がいて、その株主に対して配当を支払った方が良いというケースがあります(従業員持株会など)。配当は株主に対して持株数に応じて平等に支払われるため、少数株主に配当を支払う場合、自身にも配当が支払われてしまうこととなります。対策として、少数株主が従業員の場合は配当の代わりに賞与を払うことにより配当を支払わないで済むようにすることも可能です。従業員でない場合には種類株式を導入し少数株主にのみ配当が支払われるようにすることもできます。

おわりに

今回は、「配当」に関する論点を取り上げました。「配当」は、オーナー一人株主やオーナー家族のみが株主の会社の場合、給与でなく配当で受け取ることは税効率の視点からあまりお勧めできず、事業承継においても株価を押し上げる要因となります。配当を支払うか否かは、株主総会における決議事項になりますので、上記のような影響を把握した上で、戦略的に配当をどう取扱うかの方針を決定していくことが重要です。